僕の世界は黒。黒しかない。
愛するものも全員殺してきた。今まで、そのような世界で暮らしたことがなかったし、求めようともしなかった。
「クフフ、その僕が光を求めるなどありはしません」
ただ、生きて。そして、僕たちを実験の「道具」としか考えなかったマフィアを殲滅させる。
それには、黒以外は何も要らない。
その僕が光を求めていると、この少年は言う。
もう体がボロボロ。意識があるだけでも奇跡の状態なのに、少年は僕の眸を真っ直ぐ見てくる。
「君は、哀しそうだよ。本当は…」
「煩いです。僕が哀しい?そんなこと…!」
そんなことあるはずがない。それなのに、言葉が出てこない。代わりに眸から水がでてく
る。
涙だった。
今まで、僕は泣いたことがなかった。泣き方すら知らない。
僕は本当は寂しかったのかもしれない。誰かに助けて貰いたかったのかもしれない。
「でも、これからは一人ぼっちじゃないよ。沢田綱吉がいるじゃない」
「クフフフフ。いいんですよ、僕はこれからも一人です」
寂しくない、は嘘かもしれないが、仲間と呼ぶものが居るのは自分にとってはおかしい。
ボンゴレはみな、優しい人ばかりだ。そのなかに入ってはいけないと、僕は思う。
もし入ったらこれからも、その温もりを求めてしまう。
「僕も、一人が、いいと思ってたよ。でも、あそこは、何故か居心地がいい」
少年は眸を閉じてしまった。
僕の世界は黒以外、何もない。それなのに、この少年たちと出会って、少しずつ変わってしまったのかもしれない。
漆黒の世界に一筋だけ光がさしてきた。
それから、ボンゴレファミリー10代目、霧の守護者になったのはまだ先の話。
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2009/11/03
黒曜編です。